国語の力 読解力アップ 想像力を伸ばす その3
想像力を伸ばすその3
その1やその2で紹介した、家の玄関や海で魔法のテレビの練習をしておくと、国語の授業で活きてきます。
物語文を読み深めていく時です。
例えば、「ごんぎつね」の
ごんは、お念仏がすむまで、井戸のそばにしゃがんでいました。兵十と加助はまたいっしょに帰っていきます。ごんは、二人の話を聞こうと思って、ついていきました。兵十のかげほうしをふみふみいきました。
お城の前にまで来たとき、加助が言い出しました。
「さっきの話は、きっと、そりゃあ、神さまのしわざだぞ。」
「えっ?」と、兵十はびっくりして、加助の顔を見ました。
この場面で魔法のテレビの威力が発揮されます。
「ここで魔法のテレビを使って、読んでみよう」
と問うだけで、
「ごんは、井戸のそばで、もう〜 まだかなと小さい声でブツブツ言ってる」
「兵十たちの足音は聞こえてるけど、ごんの足音は聞こえない」
「ごんの耳がピーンと立ってる」
「兵十の目は大きくなっていて、加助は目が細くなっている」
など、文には書いていないけれど、描写から想像をふくらませて発言してくれます。
「それはどの文からそう考えたの?」
と問うことで文章の言葉から根拠を示すことを鍛えていけます。
「満月が向こうにあって、兵十たちがいて、ごんは、その後ろにいる」
と発言した子に根拠を尋ねると
「かげぼうしは、明るくなかったら出ないし、ふみふみと書いてあるから」
と位置関係を読み取っていました。
かげぼうしの長さと月の高さが論争になったこともありました。
「月が高いとかげぼうしが短いので、ごんは気づかれてしまうので、かげは長い」
「ごんは話を聞きたくてしかたなかったから、だいぶ近いはず。だからかげも短くて、月はけっこう上に出ていた」
というような発言で盛り上がりました。
国語の授業では、登場人物の気持ちを問うことが主になりがちです。
気持ちを聞くと「さみしかった」「がっかりした」というようなひとくくりの答えについついなってしまいます。
気持ちは表情・行動や情景など様子に表れます。
ごんががっかりするこの後、かげぼうしに着目し、その様子を深く想像した子らは、
「ごんは兵十たちのかげにほとんど入ってるから、月の光は当たっていなくて暗い」
「そのかげぼうしの中で下を向いてる」
「がっかりして、ちょっと立ち止まったからかげぼうしから出た」
と様子を詳しく想像することで、気持ちに迫っていきました。
私は「ごんぎつね」の映画を作る監督のつもりで場面を想像してごらんと伝えていました。
みなさんなら、もしこのシーンを撮影するなら、どんな背景や登場人物に演技指導をしますか?
物語文を深く読みこむ授業は、自分が想像した考えをみんなですり合わし、共有していく力をつけることだと私は考えています。
この魔法のテレビを授業に取り入れてみてください。