素敵な先生 2
素敵な先生 2
団塊の世代の方々が退職され、この10年で教育現場でも若い世代が大量に増えました。
20代、30代前半の若いエネルギー溢れる教員が多くなっています。
私の現在の勤務校では、50代は若干いますが、30代後半から40代は非常に少なく、各世代のバランスが取れていない状況になっています。
若い先生は子どもとの距離も近く、元気もあるので、学校に活気が出ます。一方で、経験が少ないために授業や学級経営に困っている状況も生まれています。
ベテランの先生が経験から得た貴重な授業力や学級経営力が、若い世代へと継承されにくくなっている事に危惧を感じています。
私も若い頃、たくさんの先輩から多くの事を学ばせてもらいました
こうした方がいいよというアドバイスを一旦素直に受け入れ、そのうえで取捨選択をし、自分のやり方を作ってくれる事を願っています。
今はベテランの先生が何かアドバイスをしても、説教をされたと考える若い先生が多いように思います。
そんな中、5年前に私が初任者指導を担当した4人の新採用教員のうちにとりわけ熱心な先生がいました。
初任者指導という制度は、昔はありませんでした。
昔はたまに出張に行き、研修を受けるだけでした。もちろん周りの先生に聴くと教えてはくれますが、いきなり学級担任となり、たくさんの失敗をしながら苦労をしたのを覚えています。
現在は、初任者が赴任すると、その学校の教員の誰かが初任者指導という形で行なう方法か、拠点校方式といって初任者指導専任教員が数名を担当する方法で行なわれています。
当時、私は後者の初任者指導専任教員として、彼の学級に週に一日、朝から夕方まで張り付いて指導をさせてもらっていました。
4人とも週に一日、同じように指導していましたが、授業や学級経営を向上させたいという意欲が一番伝わってくるのが彼でした。
授業中は、基本的に口を出さずに観察をし、放課後に発問や指導に対するアドバイスや相談に乗り、いくつかの項目について研修を進めていきます。
私から子どもたちへ指導したり、替わりに授業を行なう事もありましたが、彼の場合はほとんどそれをせずに済みました。
それほど、しっかりしていたのです。また、放課後の研修が終わって、学校が閉まる頃まで質問をしてきます。
何度か、学校が閉まったのに「もう少し聴きたい事があるのでお時間ありますか?」と喫茶店でノートを開いて研修の続きをした事もあったぐらいです。
その熱心さに私は全力で応えてあげようと思っていました。もちろん、1年目なので上手くいかない事もありましたが、彼のクラスはとても素敵な雰囲気でした。
息子のような彼、孫のような彼のクラスの子どもたちをニコニコしながら見ている私は、まるでお爺ちゃんの敬老参観のようでした。
わずか一年でとても成長し、授業もメリハリがあり、ハツラツとしたその言動に子どもたちも信頼し、見事な学級経営でした。
今、彼は5年目です。たまに会って近況を聴くことが楽しみです。謙虚にこの年寄り先生から学ぼうとしてくれています。
彼を見ていると、若い世代の教員にもこんな素敵で熱心な先生がいる事に安心し、日本の教育もまだまだ捨てたもんではないと思っています。